経営者の皆さん、賃金・給与事務の責任者の皆さんそして会社・団体で働いている皆さん又働いていた皆さん
とかく問題になりがちな給与・賃金について、
お互いにしっかりと了解できるようにするため、
事務的にまず確認・再確認した方がよいことがあります。
それは、賃金支払いの記録として最低限はっきりすべきこととして労働基準法が定めている「賃金台帳」のことを理解することです。
以下ご説明します。
給与計算、賃金台帳のことでわからないことがありましたら、どうぞお問い合わせ、ご連絡ください。
【注】
下は、専門家でない一般の方を念頭に置いて書いてありますので、法律用語や専門用語をそのまま使用していないことも若干ありますが、意味内容は間違っておりません。
企業や団体(使用者)が従業員を雇用するということは、従業員がその組織の中で組織的な仕事すなわち指揮命令系統に基づく仕事をする対価として給料・賃金を支払うという関係です。ですから、"給料・賃金を支払うときに、その支払の内容を労使ともどもきっちり詳しくわかるようにするのがスジ"ということになります。
そこで、「労働基準法」という法律によって、使用者が従業員に給料・賃金を支払うときは、その支払の都度個々の従業員ごとに下記のような事項を書いた書類――法律上「 賃金台帳 」という――を作成(保存)することになっています。これは罰則付きの義務とされています。
この賃金台帳については、下に示すような様式が決められていますが、最小限法定の必要事項が記載されているものであればそれ以外の変更をしてもよいことになっています。
なお、「労働基準法」というのは、憲法に基づいて、雇われて働く人(労働者)の働くための条件(労働条件)の最低基準(人たるに値する生活)に関することを定めた基本的な法律です。企業・団体を経営する場合は、知りませんでしたとはいえない法律となっています。
以上のようなことですから、世間でちょくちょく行われているからといって、賃金台帳の記載事項を満たさない独自の給与計算の書類作成だけでは、法律違反であることはもとより適正な労使の関係、労働・雇用の関係、労働・雇用する契約形成ためにも、はなはだ具合が悪いということになります。
さて、労働基準法で、賃金台帳に書くべきこととされている事柄は次のとおりです。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間 *大切です。
- 労働日数 *これも非常に大切です。
- 労働時間数 *これはなおさら大切です。
- 法定労働時間外労働時間数、法定休日労働時間数、深夜労働時間数
*こちらはさらに重要です。 - 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
*一括総額で書くのはだめです。 - 控除額(法令並びに労基法上の労使協定に基づき控除した額)
*これを書かないのはだめです。
以上は絶対に必ず書かなければなりませんが、それ以外は強制されていません。しかし、所属、職名書いたり、入社年月日、住所その他給与計算に関係する適切な事項は書いておくと便利です。
これらの記載のためには、その記載の根拠として労働契約内容を明らかにするもの――雇用契約書や労働条件明示(通知)書あるいは契約内容となっている周知済みの合理的な就業規則(賃金規則、給与規定等を含むもの)――や労働日数・時間を適切に記録した書面等(タイムカード、出勤簿その他)が必要になります。
*なお、上に述べたような適切な労働関係・労務管理からの要請だけでなく、所得税法、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険料徴収法による税や保険料算定の基礎になるものとして賃金台帳が求められています。
これらの事項を次に示す様式(様式第20号)にならって記載します。なお、日々雇入われる人(1か月を超えて引き続き使用される者を除く。)については、別に簡単な様式(様式第21号)が定められています。
給与計算をするときは、労働基準法で義務付けられているこの様式にならって、最低限法定事項を記載する必要があります。その場合、「記載上のポイント」に従って記載することになります。
★ 以下は横書きで示していますが、厚労省のホームページでは縦書きのものが示されてい ます。この様式は、最小限法定の必要事項が記載されるものであればそれ以外について変更してもよいことになっています
【 参考 】 「給与・給料(支払)明細(書)」について
労働基準法では、賃金台帳の内容を書いた文書――一般的に「給与・給料(支払)明細(書)」などといわれているもの――を従業員に渡す義務は明定されていません。
しかし、賃金台帳作成は、労働の実績と支払いとの関係を明らかにすることによって、使用者と従業員に労働とその対価である賃金に対する認識を深めさせる機能を持つと考えられ、それが本規定の理由とされていますので、労働契約で明示的に決めなくても使用者はこれを従業員に渡すのが適切と考えられます。したがって、労務管理的にも必要なことと考えられています。
以上のようなことですから、労働基準法で給料明細の交付がはっきり義務付けられていないから給料の内容を文書で知らせなくてもいいと考えるのは適切ではない、と考えられます。
また、他の法律(所得税法、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険料徴収法)では、給料・賃金からの税金・保険料の源泉徴収・控除を書いた書類を従業員に交付することが義務づけられています。