6月の国会で、パートタイムで働くの方々(短時間労働者。以下、「パートタイム労働者」と書きます。)の公正な待遇を確保し、また、納得して働くことができるように、「パートタイム労働法」という法律が改正され、来年(平成27年)4月1日から施行されることになりました。
この法律に関係する詳しいことがこの度公になりましたので、その情報をお知らせします。
【ご注意】
1週間の所定の労働時間が通常の労働者(正社員)よりも短い方はすべてこの法律の対象になり、準社員、嘱託、臨時社員、アルバイト等の名称に関係ありません。
正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者については、
これまで、(1) 職務内容が正社員と同じ、(2) 人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同じであってかつ(3) 無期労働契約を締結しているパートタイム労働者であることとされていましたが、
改正後は、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も、(1)、(2) に該当すれば正社員との差別的取扱いが禁止されます。
II 「短時間労働者の待遇の原則」を新しく明示しました。
事業主が、雇用するパートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、
その待遇の相違は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない、と規定しました。
つまり、このように、「広く全ての短時間労働者を対象とした待遇の原則」を新しく規定しました。
したがって、改正後は、パートタイム労働者の待遇に関するこうした一般的な考え方も念頭に、パートタイム労働者の雇用管理の改善を図っていくこととなります。
* これに関連して、「通勤手当」も、名称にかかわらず、距離や実際にかかっている経費に関係なく一律の金額を支払っている(職務の内容に密接に関連して支払われている)ような場合は、正社員との均衡を考慮しつつ、職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して決定するように努めることとされました(施行規則)。
また、「パートタイム労働に関する指針(厚生労働省告示)」で、次のことが示されました。
①事業主は、「労働契約法」という法律がパートタイム労働者にも適用があることを認識し遵守しなければならないこと
②パートタイム労働者が、親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由として解雇等が行われることは適当でないこと
事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容について、説明しなければならないこととなります。
例えば、賃金制度はどうなっているか、どのような教育訓練を行っているか、どの福利厚生施設が利用できるか、どのような正社員転換推進措置があるかなどを雇入れ時に説明しなければならなくなりました。
* なお、改正前から、事業主は、パートタイム労働者から賃金、教育訓練、福利厚生施設や正社員転換推進措置の具体的決定に当たっての考慮事項について説明を求められたときは説明しなければならないことになっていました。
そして、今回、この説明を求めたことを理由に不利益な取り扱いをしてはならない――ということが新しく指針(パートタイム労働指針)に追加されました。
事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備――相談担当者を置くとか、経営者自身が相談担当者となるとか相談窓口の設置――しなければならないこととなりました。
そして、パートタイム労働者を雇い入れたときに交付する労働条件明示書(通知書)には、この相談窓口を書かなければならなくなりました。
労働者の団結を擁護し(使用者による組合活動妨害=不当労働行為の禁止)、労働関係の公正な調整を目的として、労働委員会――中央労働委員会(国の機関)と]都道府県労働委員会(都道府県の機関)――が設けられています。
6月27日に、中央労働委員会が出した命令(大阪市の不当労働行為認定)のポイントを以下に掲載しますので、参考にしてください。
平成24年2月13日、大阪市労働組合連合会(以下「市労連」)並びに市労連の構成団体である大阪市従業員労働組合、大阪交通労働組合及び大阪市水道労働組合の各組合員を含む大阪市の職員に対し、組合加入の有無やその活動状況等を尋ねるアンケート調査を実施したこと(以下「本件アンケート調査」)が、大阪市(以下「市」)による労働組合法で禁じられている労働組合の結成・運営に対する支配や介入という不当労働行為(第7条第3号)であるとして、大阪府労働委員会に救済申立てが行われました。
大阪府労働委員会は救済申立てを認めましたが、市は不服として中央労働委員会に対して再審査を申し立てました。しかし、中央労働委員会はこれを棄却し、不当労働行為であると認めました。
以下、その概要です。
施行は、6月25日(官報掲載)から1年半以内の日で政令で定めた日となります。
それに備えて準備しておきましょう。
事業主(企業等。法律用語は「事業者」)の義務(努力義務)の内容は、下記のようなものです。
法律では、この義務を“ 「心理的な負担の程度を把握するための検査」の義務 ”と言っています。また、この検査のことを一般的に「ストレスチェック」などと言っています。
この検査を極々大まかに言うと、「ひどく疲れている、へとへと、だるい、気が張りつめている、不安、落ち着かない、ゆううつな、なにをするのも面倒、気分が晴れない、といった状態がどの程度あるのかを質問調査する」といったものです。
このようなことが義務付けられるにいたったのは、労働者が職場から高いストレスを受けているという状況が続き、労災としての精神障害も増え続けているという深刻な状況に立ち至ったからです。
したがって、このストレスチェックの実施によって、なによりも精神的健康の不調が防止され、不調が生じている場合にはその進行の阻止に役立てられ、さらにその改善、治癒に結びつけることが求められ、そしてなんといっても、そのための有効な対策が押し進められ、労働者の気づきもまた増進していくことなども求められるところです。いうまでもなく、メンタルヘルス不調者を見つけ出してこれを排除するために用いる等のことは許されていません。
(ストレスチェックに関する義務の内容)
1、労働者に対し、医師、保健師その他(以下「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行うこと。
i以下、どうぞお目通しください。
(本法の目的、過労死等の定義)
この法律は、
「過労死等」すなわち
業務における過重な負荷による
脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡
若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害(2条)
の防止のための対策を推進し、
もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現
に寄与することを目的とする、としています。(1条)
(基本理念)
そして、「過労死等の防止のための対策」は、
過労死等に関する実態が必ずしも十分に把握されていない現状を踏まえ、
過労死等に関する調査研究を行うことにより過労死等に関する実態を明らかにし、
その成果を過労死等の効果的な防止のための取組に生かすことができるようにするとともに、
過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めること
等により行われなければならない、とし、
これを本法の「基本理念」と位置付けています。
(国、自治体、事業主、国民の責務)
この基本理念にのっとり、国は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有し、
地方公共団体は、国と協力しつつ、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するよう努めなければならず、
事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努めるものとする、
としています。
また、国民も、過労死等を防止することの重要性を自覚し、これに対する関心と理解を深めるよう努めるものとする、
としています。
(法制定の背景)
本法は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること
及び過労死等が、本人はもとより、
その遺族又は家族のみならず
社会にとっても大きな損失であること
に鑑みて制定されたものとされています。(1条)