マイナンバー法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律。「番号法」と略します。)に基づき、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の運用が開始され、特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)を取り扱う民間事業者は、番号法関係法令に従って、その取扱いを適法・適正に行わなければならなくなっています。
ですから、現在、番号法により民間事業者に課せられている義務、責任が実際にいろいろと発生しています。
社会保険労務士には個人番号を利用して行う事務が発生しますので、「個人番号」及び「個人番号をその内容に含む個人情報(特定個人情報)」の漏えい、滅失又は毀損の防止等、特定個人情報等の管理のために、必要かつ適切な安全管理措置を遵守する旨、事業主の皆様との契約が必要となっております。
そのような関係で、事業主の皆様が、マイナンバー関係のことでわからなくてお困りの場合にはご相談に乗ることができます。ただし、法律相談は除きます。
マイナンバー制度は、全国民を特定する一人一個の番号で国民にとって最高の秘密ですので、いろいろ問題点が指摘されていますが、行政機関でその制度の運用が始まっていますので、個人番号を扱う事業主とその受託者から外部に絶対に漏えいしないようにして、個人番号による個人情報を完璧に保護(種痘・利用の厳格な制限、漏えいの絶対的防止・厳格な保管など)しなければなりません。
ただし、①自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は、
②降格につき均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、
「妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業又は労働基準法65条3項に基づく軽易な業務への転換等を理由とした解雇その他不利益な取扱い(男女雇用機会均等法9条3項)」に当たらない。
平成26年10月23日 最高裁判所(第一小法廷)が、次のような判断を示しました。判決文はこちらhttp://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/084577_hanrei.pdf
すなわち、
妊婦が労働基準法の規定に基づいて軽易な業務への転換を請求した転換した際に降格(以下「本件降格」)となった事案について、
高等裁判所が下した「本件降格は、本人の同意を得た上で,事業主の人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものであるから,
“雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」)9条3項――女性労働者につき,妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業又は労働基準法65条3項に基づく軽易な業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとの定め――”に違反する無効なものではない、との判断」を否定し、次のような判断を示しました。
最高裁判所の判断
① 一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であり,均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念――「目的=雇用分野における男女の均等な機会・待遇の確保及び妊娠中・出産後の健康の確保措置の推進(1条)」並びに「基本理念=母性の尊重と職業生活の充実の確保(2条)」――やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解される。
② そして、下記の場合に限り、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である、
との判断を示しました。
最高裁判所が示した「均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらない場合」とは、次の二つの場合です。
① 労働者が軽易業務への転換及び降格により受ける有利な影響並びに降格により受ける不利な影響の内容や程度,降格に係る事業主による説明の内容その他の経緯や労働者の意向等に照らして,
労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき。
そして、この承諾に係る合理的な理由に関しては,上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって,上記措置の前後における職務内容の実質,業務上の負担の内容や程度,労働条件の内容等を勘案し,当該労働者が上記措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たか否かという観点から,その存否を判断すべきものと解される。
② 又は、事業主において労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,
その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,
降格につき均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる
特段の事情が存在するとき。
事案の概要
この事案は概略次のようなものです。
医療介護事業等を行う消費生活協同組合(以下「事業主」)に雇用され、事業主が運営する病院のリハビリ科の副主任の職位にあった理学療法士である労働者が,労働基準法65条3項に基づいて妊娠中の軽易な業務への転換を請求しその転換の際に副主任を免ぜられたが,その後の育児休業の終了後において副主任に任ぜられなかった。そこで、事業主に対し,上記の副主任を免じた措置は「「均等法」9条3項――女性労働者につき,妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業又は労働基準法65条3項に基づく軽易な業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとの定め――に違反する無効なものであると主張して,管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めたものでした。
これに対し、地方裁判所と高等裁判所は、冒頭に書いたような理由で、均等法に違反しないとの判決を出しました。
最高裁判所の判決要旨(補足意見含む)
労働者は、これを不服として最高裁判所に上告した結果、上記のような判断基準が示されました。
それに従って審理した結果、最高裁判所は、要旨次のように述べて、高等裁判所の判決を破棄し、審理を尽くさせるため、差戻しました。
すなわち、「本件降格については,事業主における業務上の必要性の内容や程度,上告人における業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り,均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできないものというべきである。したがって,これらの点について十分に審理し検討した上で上記特段の事情の存否について判断することなく,高等裁判所が、本件降格が均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないとした判断には,審理不尽の結果,法令の解釈適用を誤った違法がある。原判決を破棄し、上記の点について更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻す。」と。
なお、最高裁判所は、均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないとされるもう一つの場合である「労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか」ということについては、その存在を否定し、自由意思に基づいて降格を承諾したものではない、としています。
(裁判長裁判官の補足意見)
さらに、裁判長裁判官による次のような補足意見が述べられています。
すなわち、
育児休業から復帰した際に副主任に復帰させていないことに関しても、これは降格であるから、高等裁判所は十分な審理を尽くしてはいないとし、育児休業法10条が禁止する、「育児休業をしたことを理由とする不利益な取扱い」に該当するか否かは慎重に判断されるべきとし、次のように述べています。
本件においては,労働者が職場復帰を前提として育児休業をとったことは明らかであったのであるから,復帰後にどのような配置を行うかあらかじめ定めて労働者にも明示した上,他の労働者の雇用管理もそのことを前提に行うべきであったと考えられるところ,育児休業取得前に労働者に復帰後の配置等について適切な説明が行われたとは認められず,しかも本件措置後間もなく労働者より後輩の理学療法士を労働者が軽易業務への転換前に就任していた副主任に発令,配置し,専らそのゆえに労働者に育児休業から復帰後も副主任の発令が行われなかったというのであるから,これらは育児介護休業法10条の趣旨及び目的に実質的に反しないと認められる特段の事情がなかったと認める方向に大きく働く要素であるといわざるを得ないであろう。
なお,労働者は育児休業を取得する前に産前産後休業を取得しているため,育児休業から復帰した際に副主任に復帰させていないことが育児・介護休業法10条の禁止する不利益な取扱いに該当すると認められる場合には,産前産後休業を取得したことを理由とする不利益な取扱いを禁止する均等法9条3項にも違反することとなることはいうまでもない。
日本経済新聞 10月1日 http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXLASDZ3003H_Q4A930C1TI0000&uah=DF_SOKUHO_0002
ゼンショー苦境一段と 「すき家」1100店深夜営業休止 複数店員、人手不足が壁
当該企業・親会社兼持ち株会社もこの報告内容を受け止めていることを踏まえ、読者におかれても参考にできると考え掲載したものです。
すき家 ホームページ http://www.sukiya.jp/news/2014/07/20140731_1.html
株式会社ゼンショーホールディングス ホームページhttp://www.zensho.co.jp/jp/news/company/2014/07/20140731.html
なお、調査報告書の対象は、国内最大の外食企業といわれるゼンショーグループに属する㈱ゼンショーが運営する牛丼店「すき家」の店舗において発生した深刻な過重労働等ですが、本報告は㈱ゼンショーの親会社かつ持ち株会社である㈱ゼンショーホールディングスに設置された上記第三者委員会から同社に対してなされたものです。(報告日は、平成26年7月31日付となっています。)
ここでは、その概要を報告書の「目次」によって掲載します。
ご一覧のうえ、㈱ゼンショーホールディングスのホームページで公表されている調査報告書でその詳しい内容を知っていただければと思います。
調査報告書 http://www.sukiya.jp/news/tyousahoukoku%20A_B.pdf
目次
第 1 「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会の設置及び調査の実施.................1
1. 「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会の設置の経緯及び委員会の構成......1
2. 調査体制...................................................................................................................1
(1) 調査担当弁護士.......................................................................................................1
(2) 会社事務局担当者...................................................................................................1
3. 第三者委員会ガイドラインへの準拠............................................................................2
4. 当委員会の任務・調査事項........................................................................................2
5. 当委員会の調査方法及び開催状況............................................................................2
(1) 資料・データの提出依頼・分析...................................................................................2
(2) ヒアリング............................................................................................2
(3) アンケート............................................................................................3
(4) 当委員会の開催状況................................................................................................4
第2 前提となる事実........................................................................................................5
1. すき家の沿革・概要....................................................................................................5
2. ゼンショーグループの企業理念・使命..........................................................................5
3. すき家の運営体制・営業部門関連の役職....................................................................5
(1) すき家の運営体制.....................................................................................................5
(2) ZHD 社の組織体制...................................................................................................6
(3) すき家の営業部門の役職..........................................................................................7
第3 認定された事実........................................................................................................9
1. 客観データ..................................................................................................................9
(1) 退職者数・離職率の推移............................................................................................9
① 退職者数の推移..........................................................................................................9
② 新卒社員の離職率の推移..........................................................................................10
(2) クルー・社員の残業時間の推移.................................................................................10
(3) 労働基準監督署からの是正勧告・指導の件数・概要..................................................13
2. 2014 年3 月の多数の店舗の一時休業・時間帯休業に至る経緯..................................14
3. 現場の労働実態.........................................................................................................16
(1) 過重労働............................................................................................17
① 社員の過重労働........................................................................................................17
② クルーの過重労働.....................................................................................................18
(2) サービス残業...........................................................................................................18
① 社員について............................................................................................................18
(i) 労働時間管理方法から生じるサービス残業...............................................................18
(ii) 労時を意識したサービス残業....................................................................................19
② クルーについて.........................................................................................................19
(i) 労働時間管理方法から生じるサービス残業...............................................................19
(ii) 労時を意識したサービス残業....................................................................................20
③ 小括................................................................................................20
(3) 社員のプライベートの喪失........................................................................................20
(4) 一人勤務体制(ワンオペ) .........................................................................................21
① 休憩時間の非付与....................................................................................................21
② 顧客サービスの低下とクレーム..................................................................................21
③ 防犯上の問題............................................................................................................21
(5) 休憩時間の非付与/恣意的運用..............................................................................22
① 休憩時間の非付与....................................................................................................22
② 休憩時間の恣意的運用.............................................................................................22
(6) 限度を超えた休日労働.............................................................................................23
(7) 年少者の深夜労働及び賃金不払い..........................................................................23
(8) 外国人留学生の就業制限を超える労働....................................................................23
4. ZHD 社・Z 社本部による労働実態の把握・共有状況..................................................24
(1) SK 労働安全委員会................................................................................................24
(2) 総合リスク管理委員会・コンプライアンス委員会........................................................24
(3) 人事部門・労政部門.................................................................................................25
① 人事部門..................................................................................................................25
② 労政部門..................................................................................................................26
(4) 内部監査室.............................................................................................................26
(5) 労働組合(ZEAN) ...................................................................................................28
(6) Z 社取締役会・監査役..............................................................................................29
① Z 社取締役会...........................................................................................................29
② Z 社監査役..............................................................................................................29
(7) ZHD 社取締役会・監査役会.....................................................................................30
① ZHD 社取締役会......................................................................................................30
② ZHD 社監査役会......................................................................................................30
(8) 小括.........................................................................................31
第4 原因論.....................................................................................32
1. 人手不足状況による過重労働の発生と危機意識をもつ経営幹部の不在......................32
(1) 人手不足状況による過重労働の発生と「負のスパイラル」.........................................32
(2) 危機意識をもつ経営幹部の不在..............................................................................32
2. 過重労働を是正できなかった組織上の問題.................................................................33
(1) ガバナンスの機能不全..............................................................................................33
① Z 社(事業会社)自身によるガバナンスが欠如していたこと....................................33
② Z 社、ZHD 社の取締役会にリスク情報伝達がなされなかったこと...........................33
(2) 悪しき「自己責任」論と「言いっ放し・聞きっ放し」の蔓延.....................................34
(3) 頻繁な組織変更と異動..............................................................................................34
3. 経営幹部の思考・行動パターンの問題........................................................................34
(1) 経営幹部に共通してみられる思考・行動パターン........................................................34
① コンプライアンス意識の欠如.......................................................................................34
② 顧客満足のみにとらわれた思考・行動パターン...........................................................35
③ 自己の成功体験にとらわれた思考・行動パターン.......................................................35
④ 自社と社会の変化に対応する「全社的リスクマネジメント」の欠如.......................35
⑤ 数値に基づく収益追求と精神論に基づく労働力投入...................................................36
(2) 経営幹部の思考・行動パターンを基礎づけるヒアリング結果.....................................36
第5 会社施策についての当委員会の評価.......................................................................39
1. 分社化の概要.............................................................................................................39
2. 分社化の目的.............................................................................................................39
3. 当委員会の評価と提言...............................................................................................40
(1) 評価................................................................................................40
(2) 提言................................................................................................40
第6 当委員会の提言.......................................................................................................42
1. 労働環境を改善するための施策..................................................................................42
(1) 一定時間以上の長時間労働の絶対的禁止のルール化とその実現のための体制整備..42
(2) サービス残業を防止するための施策..........................................................................43
(3) 従業員(社員・クルー)を企業の重要なステークホルダーと位置づけ、その人権
と生活を尊重する企業風土を築くための施策...............................................................43
(4) バランスに配慮した投入労働時間の設定、運用.........................................................44
(5) 労働環境の重要性に関する全社的教育の実施..........................................................44
2. 経営幹部の意識を改革するための施策.......................................................................45
3. コーポレートガバナンスを改革するための施策............................................................46
4. 担当者の権限と責任の明確化のための施策...............................................................46
5. リスク情報の伝達経路を明確にするための施策...........................................................47
第7 最後に............................................................................................48
別紙
別紙 A アンケート対象者選定方法
別紙 B 表 3 すき家非管理監督者社員1 人当たり平均残業時間等の推移
別紙 1 アンケート集計結果(社員用・委員会直送分)
別紙 2 アンケート集計結果(社員用・会社回収分)
別紙 3 アンケート集計結果(アルバイト用)
8月下旬に、各都道府県労働局に設置されているすべての地方最低賃金審議会が、平成26年度の地域別最低賃金の改定額を答申しましたが、現在、改定額及び発効年月日は下表のとおり、ほぼ答申通り決定されています。(一部家定手続未了ところがありますが、答申額を示しておきます。)
そこで、国が、労働市場のセーフティーネットとして、賃金の低廉な労働者について最低額を保障することにより、労働能力の向上、事業の公正競争等に資するとともに、国民経済の発展に寄与するために、賃金額の最低限を定め、これを使用者に強制するという制度――最低賃金制度(特に最低賃金審議会に基づく最低賃金の制度)――が作られ存在してきました。
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度ですので、仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。
なお、地域別最低賃金は、[1] 労働者の生計費、[2] 労働者の賃金、[3] 通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。
特定最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。全国で242件(平成25年4月12日現在)の最低賃金が定められています。この242件のうち、241件は各都道府県内の特定の産業について決定されており、1件は全国単位で決められています(全国非金属鉱業最低賃金)。
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。)。
特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます(18歳未満又は65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。)。
なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
(1) 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
(2) 試の使用期間中の方
(3) 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
(4) 軽易な業務に従事する方
(5) 断続的労働に従事する方
なお、最低賃金の減額の特例許可を受けようとする使用者は、最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出してください。
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算 額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
派遣労働者には、派遣先の最低賃金が適用されます。
派遣労働者又は派遣元の使用者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。
支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。
計算の仕方の例は、厚生労働省のホームページhttp://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-13.htm をご覧ください。
(1) 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。
平成26年9月17日現在
都道府県名 | 最低賃金時間額【円】 | 発効年月日 | |
---|---|---|---|
北海道 | 748 | (734) | 平成26年10月8日 |
青森 | 《679》 | (665) | 《県労働局長未決》 |
岩手 | 678 | (665) | 平成26年10月4日 |
宮城 | 710 | (696) | 平成26年10月16日 |
秋田 | 679 | (665) | 平成26年10月5日 |
山形 | 680 | (665) | 平成26年10月17日 |
福島 | 689 | (675) | 平成26年10月4日 |
茨城 | 729 | (713) | 平成26年10月4日 |
栃木 | 733 | (718) | 平成26年10月1日 |
群馬 | 721 | (707) | 平成26年10月5日 |
埼玉 | 802 | (785) | 平成26年10月1日 |
千葉 | 798 | (777) | 平成26年10月1日 |
東京 | 888 | (869) | 平成26年10月1日 |
神奈川 | 887 | (868) | 平成26年10月1日 |
新潟 | 715 | (701) | 平成26年10月4日 |
富山 | 728 | (712) | 平成26年10月1日 |
石川 | 718 | (704) | 平成26年10月5日 |
福井 | 716 | (701) | 平成26年10月4日 |
山梨 | 721 | (706) | 平成26年10月1日 |
長野 | 728 | (713) | 平成26年10月1日 |
岐阜 | 738 | (724) | 平成26年10月1日 |
静岡 | 765 | (749) | 平成26年10月5日 |
愛知 | 800 | (780) | 平成26年10月1日 |
三重 | 753 | (737) | 平成26年10月1日 |
滋賀 | 746 | (730) | 平成26年10月9日 |
京都 | 《789》 | (773) | 《府労働局長未決》 |
大阪 | 838 | (819) | 平成26年10月5日 |
兵庫 | 776 | (761) | 平成26年10月1日 |
奈良 | 724 | (710) | 平成26年10月3日 |
和歌山 | 715 | (701) | 平成26年10月17日 |
鳥取 | 677 | (664) | 平成26年10月8日 |
島根 | 679 | (664) | 平成26年10月5日 |
岡山 | 719 | (703) | 平成26年10月5日 |
広島 | 750 | (733) | 平成26年10月1日 |
山口 | 715 | (701) | 平成26年10月1日 |
徳島 | 679 | (666) | 平成26年10月1日 |
香川 | 702 | (686) | 平成26年10月1日 |
愛媛 | 680 | (666) | 平成26年10月12日 |
高知 | 《677》 | (664) | 《県労働局長未決》 |
福岡 | 727 | (712) | 平成26年10月5日 |
佐賀 | 678 | (664) | 平成26年10月4日 |
長崎 | 677 | (664) | 平成26年10月1日 |
熊本 | 677 | (664) | 平成26年10月1日 |
大分 | 677 | (664) | 平成26年10月4日 |
宮崎 | 677 | (664) | 平成26年10月16日 |
鹿児島 | 《678》 | (665) | 《県労働局長未決》 |
沖縄 | 《677》 | (664) | 《県労働局長未決》 |
全国加重平均額 | 《780》 | (764) |
※ 括弧書きは、平成25年度地域別最低賃金額
二重括弧は、都道府県労働局長未決の地方最低賃金審議会答申額
6月の国会で、パートタイムで働くの方々(短時間労働者。以下、「パートタイム労働者」と書きます。)の公正な待遇を確保し、また、納得して働くことができるように、「パートタイム労働法」という法律が改正され、来年(平成27年)4月1日から施行されることになりました。
この法律に関係する詳しいことがこの度公になりましたので、その情報をお知らせします。
【ご注意】
1週間の所定の労働時間が通常の労働者(正社員)よりも短い方はすべてこの法律の対象になり、準社員、嘱託、臨時社員、アルバイト等の名称に関係ありません。
正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者については、
これまで、(1) 職務内容が正社員と同じ、(2) 人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同じであってかつ(3) 無期労働契約を締結しているパートタイム労働者であることとされていましたが、
改正後は、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も、(1)、(2) に該当すれば正社員との差別的取扱いが禁止されます。
II 「短時間労働者の待遇の原則」を新しく明示しました。
事業主が、雇用するパートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、
その待遇の相違は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない、と規定しました。
つまり、このように、「広く全ての短時間労働者を対象とした待遇の原則」を新しく規定しました。
したがって、改正後は、パートタイム労働者の待遇に関するこうした一般的な考え方も念頭に、パートタイム労働者の雇用管理の改善を図っていくこととなります。
* これに関連して、「通勤手当」も、名称にかかわらず、距離や実際にかかっている経費に関係なく一律の金額を支払っている(職務の内容に密接に関連して支払われている)ような場合は、正社員との均衡を考慮しつつ、職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して決定するように努めることとされました(施行規則)。
また、「パートタイム労働に関する指針(厚生労働省告示)」で、次のことが示されました。
①事業主は、「労働契約法」という法律がパートタイム労働者にも適用があることを認識し遵守しなければならないこと
②パートタイム労働者が、親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由として解雇等が行われることは適当でないこと
事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容について、説明しなければならないこととなります。
例えば、賃金制度はどうなっているか、どのような教育訓練を行っているか、どの福利厚生施設が利用できるか、どのような正社員転換推進措置があるかなどを雇入れ時に説明しなければならなくなりました。
* なお、改正前から、事業主は、パートタイム労働者から賃金、教育訓練、福利厚生施設や正社員転換推進措置の具体的決定に当たっての考慮事項について説明を求められたときは説明しなければならないことになっていました。
そして、今回、この説明を求めたことを理由に不利益な取り扱いをしてはならない――ということが新しく指針(パートタイム労働指針)に追加されました。
事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備――相談担当者を置くとか、経営者自身が相談担当者となるとか相談窓口の設置――しなければならないこととなりました。
そして、パートタイム労働者を雇い入れたときに交付する労働条件明示書(通知書)には、この相談窓口を書かなければならなくなりました。
労働者の団結を擁護し(使用者による組合活動妨害=不当労働行為の禁止)、労働関係の公正な調整を目的として、労働委員会――中央労働委員会(国の機関)と]都道府県労働委員会(都道府県の機関)――が設けられています。
6月27日に、中央労働委員会が出した命令(大阪市の不当労働行為認定)のポイントを以下に掲載しますので、参考にしてください。
平成24年2月13日、大阪市労働組合連合会(以下「市労連」)並びに市労連の構成団体である大阪市従業員労働組合、大阪交通労働組合及び大阪市水道労働組合の各組合員を含む大阪市の職員に対し、組合加入の有無やその活動状況等を尋ねるアンケート調査を実施したこと(以下「本件アンケート調査」)が、大阪市(以下「市」)による労働組合法で禁じられている労働組合の結成・運営に対する支配や介入という不当労働行為(第7条第3号)であるとして、大阪府労働委員会に救済申立てが行われました。
大阪府労働委員会は救済申立てを認めましたが、市は不服として中央労働委員会に対して再審査を申し立てました。しかし、中央労働委員会はこれを棄却し、不当労働行為であると認めました。
以下、その概要です。
施行は、6月25日(官報掲載)から1年半以内の日で政令で定めた日となります。
それに備えて準備しておきましょう。
事業主(企業等。法律用語は「事業者」)の義務(努力義務)の内容は、下記のようなものです。
法律では、この義務を“ 「心理的な負担の程度を把握するための検査」の義務 ”と言っています。また、この検査のことを一般的に「ストレスチェック」などと言っています。
この検査を極々大まかに言うと、「ひどく疲れている、へとへと、だるい、気が張りつめている、不安、落ち着かない、ゆううつな、なにをするのも面倒、気分が晴れない、といった状態がどの程度あるのかを質問調査する」といったものです。
このようなことが義務付けられるにいたったのは、労働者が職場から高いストレスを受けているという状況が続き、労災としての精神障害も増え続けているという深刻な状況に立ち至ったからです。
したがって、このストレスチェックの実施によって、なによりも精神的健康の不調が防止され、不調が生じている場合にはその進行の阻止に役立てられ、さらにその改善、治癒に結びつけることが求められ、そしてなんといっても、そのための有効な対策が押し進められ、労働者の気づきもまた増進していくことなども求められるところです。いうまでもなく、メンタルヘルス不調者を見つけ出してこれを排除するために用いる等のことは許されていません。
(ストレスチェックに関する義務の内容)
1、労働者に対し、医師、保健師その他(以下「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行うこと。
i以下、どうぞお目通しください。
(本法の目的、過労死等の定義)
この法律は、
「過労死等」すなわち
業務における過重な負荷による
脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡
若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害(2条)
の防止のための対策を推進し、
もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現
に寄与することを目的とする、としています。(1条)
(基本理念)
そして、「過労死等の防止のための対策」は、
過労死等に関する実態が必ずしも十分に把握されていない現状を踏まえ、
過労死等に関する調査研究を行うことにより過労死等に関する実態を明らかにし、
その成果を過労死等の効果的な防止のための取組に生かすことができるようにするとともに、
過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めること
等により行われなければならない、とし、
これを本法の「基本理念」と位置付けています。
(国、自治体、事業主、国民の責務)
この基本理念にのっとり、国は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有し、
地方公共団体は、国と協力しつつ、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するよう努めなければならず、
事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努めるものとする、
としています。
また、国民も、過労死等を防止することの重要性を自覚し、これに対する関心と理解を深めるよう努めるものとする、
としています。
(法制定の背景)
本法は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること
及び過労死等が、本人はもとより、
その遺族又は家族のみならず
社会にとっても大きな損失であること
に鑑みて制定されたものとされています。(1条)
7月1日から、改正された「男女雇用機会均等法施行規則」等が施行されます。
■雇用保険法改正
本年4/1施行および10/1施行予定
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-01.pdf
・育児休業給付の充実
・教育訓練給付金の拡充及び教育訓練支援給付金の創設
・就業促進手当(再就職手当)の拡充
・平成25年度末までの暫定措置の延長(3年間)
■パートタイム労働法改正
本年4月23日公布から1年以内に施行予定
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-28.pdf
・短時間労働者の均等・均衡待遇の確保
・短時間労働者の納得性を高めるための措置
・その他(事業主名の公表規定の創設等)
■国民年金法・厚生年金保険法等改正
主に本年10/1施行予定
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-33.pdf
・年金保険料の納付率の向上方策等
・事務処理誤り等に関する特例保険料の納付等の制度の創設
・年金記録の訂正手続の創設
・年金個人情報の目的外利用・提供の範囲の明確化
厚生労働省が設置した、「働きやすい・働きがいのある職場づくり」プロジェクト企画委員会では、働きやすい・働きがいのある職場づくりを進めるために、中小企業が利用できる各種ツールを作成しました。
■「働きやすい・働きがいのある職場づくりに活用できるツール」は、次のようなものです。
(1) ポータルサイト「働きやすい・働きがいのある職場づくりサイト」
中小企業の取組み事例、中小企業事業主向けの支援策や、調査報告書の概要を掲載したポータルサイト。 URL: http://www.mhlw.go.jp/chushoukigyou_kaizen/
(2) 「働きやすい・働きがいのある職場づくり事例集」
「評価・処遇」「人材育成」「業務管理・組織管理」「人間関係管理」に取り組む中小企業の事例を業種別・取組 み別に紹介した事例集。このほか、雇用管理改善に取り組む中小企業事業主向けの支援策や、(3)の調査報告書の概要を掲載。
(3) 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」(別添)
雇用管理制度などの取組み状況と、「働きやすさ」「働きがい」との関係などについて、中小企業の人事担当者(企業調査)と中小企業で働く従業員(従業員調査)を対象に調査した報告書。
別添 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査結果報告書」 (概要版)(PDF:389KB)
参考2 「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」
参考3 リーフレット『目指しませんか?「働きやすい・働きがいのある職場づくり」』